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ソフトウェアのCO2排出量、「使い続けるコスト」まで測れる時代へ:NTTがライフサイクル全体の算定ルールを拡張

AIの普及が進むなか、データセンターやクラウドサービスの電力消費、そしてICT分野全体の環境負荷への関心が高まっています。ソフトウェアは物理的な素材を持たないように見えても、実際には稼働し続けるかぎり、クラウドやネットワーク、端末、データセンターを通じてエネルギー消費と無関係ではありません。その環境負荷を「開発が終わった後」まで含めて算定する仕組みが、国内でも整い始めました。

Cradle-to-Gate から Cradle-to-Grave へ

2026年3月、NTTは日本環境倶楽部「ソフトウェア分野の脱炭素研究会」での議論を主導し、ソフトウェア製品のCO2排出量算定ルールをライフサイクル全体(Cradle-to-Grave)へ拡張したことを発表しました。

従来の算定ルールは、調達・開発段階までを対象とするCradle-to-Gateにとどまっていました。つまり、「リリース後に何年も動き続けるソフトウェアが、実際にどれだけCO2を排出するか」は、これまで十分に評価しきれない領域だったといえます。

今回の整理により、調達・開発・運用・廃棄の全フェーズにわたるCO2排出量の算定が可能になりました。しかも、その考え方は経済産業省・環境省の「カーボンフットプリント ガイドライン」に基づいており、公的な枠組みに沿ったルールとして整理されています。

実務が変わる:「見積段階」でのCO2算定が可能に

このルールが実務にもたらす変化として、特に注目したいのが見積段階でのCO2排出量算定です。

従来、発注や調達の段階でソフトウェア運用時のCO2排出量を見積もろうとしても、開発金額を基準とした大まかな手法に頼らざるを得ず、実際の排出量との乖離が課題となっていました。今回のルールでは、運用時に発生する事象や排出源が定義・体系化されたことで、より実態に近い形で算定を行いやすくなります。

これは、調達・設計段階から環境性能を判断材料に加えられるようになることを意味します。言い換えれば、「機能」や「価格」と並ぶ軸として「環境負荷」がソフトウェア選定に組み込まれていく、実質的な入口が示されたと見ることができます。

Scope3開示とグリーン調達への活用

今回のルールは、単なる技術的整理にとどまりません。算定結果は、企業のScope3(サプライチェーン排出量)の算定・報告にも活用できるとされています。

ソフトウェア調達先のCO2排出量を定量的に把握できれば、サプライチェーン全体での排出量管理や、環境情報の開示、調達判断の高度化にもつながります。これまで見えにくかったデジタル領域の環境負荷が、企業の説明責任や調達実務の中に組み込まれていく可能性が出てきたということです。

NTTは今後、このルールの国際標準化にも取り組む方針を示しています。日本発の算定手法が、将来的にグローバルなソフトウェア調達や評価の考え方に影響を与える可能性もあります。

ウェブサービスにも広がる視点

今回のルールが対象とする「ソフトウェアの運用段階」という考え方は、継続的に稼働するウェブサイトやウェブアプリケーションにも通じるものがあります。

ウェブは物理的な製品ではありませんが、サーバー、通信、端末を通じて継続的にエネルギーを消費します。画像の重さ、コードの最適化状況、配信設計、ホスティング環境などによって、その環境負荷は変わります。今後は、ウェブサービスにおいても、機能や価格だけでなく、環境負荷や環境性能が問われていく可能性があります。

当社のGreenSyncWeb®も、こうした視点を踏まえ、W3C Web Sustainability Guidelines(WSG)などの国際的な指針も参照しながら、ウェブサービスの設計・ホスティング・運用における環境負荷の低減を支援する取り組みとして位置づけています。低炭素なホスティングの選定、フロントエンドの軽量化、運用面での改善提案などを通じて、環境配慮と実用性の両立を目指しています。

まとめ

今回のNTTの発表は、ソフトウェアの環境負荷を、調達・開発だけでなく運用・廃棄まで含めて把握しようとする国内の動きが、より具体的な形で整理され始めたことを示しています。

これは、デジタル領域においても「使い続けることによる環境負荷」を測り、比較し、調達や報告に活用していく時代への転換点の一つといえます。今後は、ソフトウェアやウェブサービスも、機能や価格だけでなく、環境性能を含めて選ばれる方向へ進んでいく可能性があります。

出典:NTTニュースリリース「ソフトウェアライフサイクル全体のCO2排出量算定ルールを策定し、低炭素なソフトウェア関連ビジネス創出を推進」