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第5回「ESGやCSR文脈におけるウェブの二酸化炭素排出量の位置づけ」(連載:脱炭素×サステナブルなウェブ運用のススメ)

1.はじめに:企業活動における環境配慮の重要性の高まり

近年、企業活動における環境配慮の重要性はますます高まっています。脱炭素社会の実現に向けた取り組みが世界的に進むなか、企業経営においてもESG(環境・社会・ガバナンス)の視点が重視されるようになりました。我が国でも2050年カーボンニュートラルの実現に向け、地域脱炭素の取り組みが各地で進められています。

本稿では、ウェブサイト運用における二酸化炭素排出量が、ESGやCSRの文脈でどのように位置づけられる可能性があるのかを整理し、環境負荷の可視化が企業価値にどのような意味を持つのかを考察します。

2.なぜ今、デジタル領域の環境負荷が注目されるのか

クラウドサービスの普及や動画配信、AIの利用拡大などにより、データセンターや通信インフラの電力消費は世界的に増加しています。

企業活動におけるデジタルサービスの利用は、間接的な環境負荷としてScope3と関連し得る領域として注目され始めています。ただし、現時点では算定方法や対象範囲が統一されているわけではなく、企業ごとに取り扱いが異なる場合もあります。

こうしたデジタル領域の環境負荷は、工場の排出のように目に見えるものばかりではありません。サーバー、通信ネットワーク、利用端末など複数の要素に分散しているため、実態が把握しにくいという特徴があります。

そのため、まずは環境負荷を「可視化すること」が重要なテーマとして議論されるようになっています。

3.ウェブの二酸化炭素排出量はどのように位置づけられるか

では、企業が運用するウェブサイトの二酸化炭素排出量は、ESGや環境情報開示の中でどのように位置づけられるのでしょうか。

ウェブサイトの閲覧は、単一の設備で完結するものではなく、複数のインフラによって成り立っています。主に次のような要素が関係します。

  • クラウドやデータセンターでのサーバー処理
  • 通信ネットワークを通じたデータ転送
  • 利用者の端末での表示処理

ウェブ利用に伴う二酸化炭素排出の構造

各段階で電力が消費され、その結果として二酸化炭素が排出されます。

ウェブ利用に伴う二酸化炭素排出の構造図

注記:図はウェブ利用に伴う電力消費と二酸化炭素排出の関係を示した一般的な構成イメージです。

図の説明

ウェブサイトの利用は、複数のインフラによって構成されています。図では、ユーザーがウェブサイトを閲覧するまでの構造を上から順に示しています。

最上部には「ユーザー」があり、閲覧や操作を行います。その下に「利用者端末」があり、パソコンやスマートフォンなどでウェブページの表示処理が行われます。

次に「通信ネットワーク」があり、回線、基地局、ルーターなどを通じてデータが転送されます。

さらに「CDN(コンテンツ配信ネットワーク)」があり、キャッシュされたコンテンツを利用者に近い場所から配信します。

その下には「データセンター(オリジンサーバー)/クラウド」があり、サーバー処理やストレージ管理、機器の冷却などが行われています。この環境の中で「ウェブサイト(ウェブサービス)」が運用され、コンテンツの提供や運用管理が行われています。

図の左側には、これらの各段階において電力が消費されることが示されています。また、電力消費に伴い二酸化炭素が排出される可能性があることも示されています。

このようにウェブサイトの利用は、複数のインフラに支えられた仕組みとなっています。

しかし、ウェブサイトの二酸化炭素排出量がGHG Protocolなどの国際的な排出量算定基準において独立した項目として定義されているわけではありません。クラウド利用や通信など複数の要素に関わるため、企業ごとの算定方法やScope区分の扱いも異なる場合があります。

そのため現段階では、デジタル領域の環境負荷を理解するための一つの参考指標として位置づけることが現実的です。

4.可視化がもたらす経営上の意味

まず、環境配慮の取り組みを具体的な数値として示すことができる点です。
環境方針やサステナビリティ方針は、多くの場合理念として掲げられますが、数値として示すことができれば、より具体的に説明することが可能になります。こうした可視化は、持続可能な経営に向けた取り組みを示す材料にもなります。

また、可視化は継続的な改善の起点にもなります。
ウェブサイトの最適化やグリーンホスティングの利用など、設計や運用の工夫によって環境負荷を低減できる可能性があります。

こうした取り組みは、単に環境配慮にとどまらず、ページ表示速度の向上やユーザー体験の改善につながる場合もあります。結果として、ウェブサイトの利便性や信頼性の向上にも寄与します。低炭素ウェブが企業価値の向上につながる可能性については、別の記事でも解説しています。

環境情報を透明性のある形で示し、その取り組みについて説明責任(Accountability)を果たすことは、企業の信頼性を高める重要な要素となります。こうした可視化の取り組みは、企業内外における環境意識や行動の変化を促す契機にもなり得ます。

5.まとめ:可視化と責任ある情報開示

ウェブサイトの二酸化炭素排出量は、現時点ではESG開示の義務項目として明確に定められているものではありません。一方で、クラウド利用やデータ通信の拡大に伴い、デジタル領域の環境負荷は今後ますます注目されるテーマになる可能性があります。

ただし、ウェブサイトの環境負荷は、通信環境や利用端末、データセンターの電源構成などさまざまな要因に影響されます。
そのため、測定結果を示す際には推定値であることを明確にし、測定方法や前提条件を説明することが重要です。また、測定結果は一度提示して終わりではなく、継続的に更新していく姿勢も求められます。定期的な測定と改善を行うことで、より信頼性の高い情報として活用することができます。

環境負荷の可視化や継続的な改善の重要性を踏まえ、次回はA評価を目指すために実践しやすい省エネ改善のポイントを解説します。

参考文献・出典