日本市場におけるウェブ最適化の二酸化炭素排出量削減効果とは? 実際に試算してみました

はじめに:日本市場における削減効果とは?
ウェブサイトの最適化によって、どれほどの二酸化炭素排出量を削減できるのでしょうか?
日本のインターネット利用者数や年間ページビュー数、ページ容量の平均値、最適化による削減率などの条件を設定し、日本市場全体における削減効果を試算してみました。
結論:258.5万トン CO2(約74.7%削減)
最適化前:約346万トン − 最適化後:約87.5万トン = 約258.5万トン CO2(約74.7%削減)
結論から申し上げますと、約74.7%の二酸化炭素排出量の削減が見込まれるという試算結果となりました。では、この約258.5万トンの削減とは、実際どの程度のインパクトを持つのでしょうか?
この258.5万トンという削減量は、日本の年間二酸化炭素排出量(約10億トン)全体の約0.26% に相当します。たった1つの取り組みで、全体排出量の0.2%超を削減できる可能性があるという点は、非常に大きな環境インパクトといえるでしょう。
本試算は、グリーンホスティング(再生可能エネルギー)を利用していない場合を前提としています。つまり、ウェブサイトを最適化するだけで、相当量の二酸化炭素排出を抑制できる可能性があるということです。
以下では、今回の試算の根拠や前提条件について解説します。
試算に用いた前提条件
本試算では、以下の前提条件に基づいて計算しています。なお再生可能エネルギーを使用していないホスティング環境(グリーンホスティング未対応)を想定しています。
項目 | 値 |
---|---|
日本のインターネット人口 | 約1億168万人 [1] |
平均ページビュー数/日(1人) | 約50PV [2] |
年間ページビュー数(総計) | 約1.8兆PV [3] |
ページ容量(最適化前) | 約2.375MB [4] |
ページ容量(最適化後) | 約0.6MB [5] |
ページあたりの二酸化炭素排出量 | 約0.81g CO2 [6] |
- 15歳以上の個人 約1億1974万人 × 普及率 84.9% = 約1億168万人(出典:総務省「令和5年版 情報通信白書(2022年調査)」)注記:政府公開資料より引用
- ニールセンやMMD研究所「スマートフォン利用に関する調査」などを参考に、スマホ+PC利用状況をもとにした当社独自の推計です。
- 約1億168万人 × 50PV × 365日 = 約1.8兆PV
- 約2.0〜2.75MBの中央値である2.375MBを採用。出典:HTTP Archive “State of the Web 2024”
- この基準は、世界平均のページ容量(約2MB超)と比較して約70%以上の削減に相当し、GreenFrame.ioやWebsite Carbon Calculatorなどの各種CO2評価ツールにおける評価傾向と照らし合わせた結果、600KB未満は「低排出・軽量」に相当する水準であると判断しています。当社の環境ポリシー「目標値:ページ容量600KB未満」についてもご覧ください。
- 出典:The Green Web Foundation によるオープンソースライブラリ「co2.js」の排出係数
備考(試算の対象範囲について)
- 本記事におけるページ容量・転送データ量・CO2排出量の試算は、主に静的ウェブサイト(HTML/CSS/画像/JavaScript等)を想定したものであり、動画配信サービス、大規模SPA(Single Page Application)や動的生成コンテンツなどの構成は含んでいません。
- ページ容量はHTTP Archive等のデータをもとに平均的なページ構成を基にした参考値を採用しており、特定の業種・業界による個別の負荷を反映したものではありません。
- なお、実際の排出量は、CDN利用状況、キャッシュ制御、アクセス地域、画像形式の最適化(WebP/AVIF等)、ホスティングインフラのエネルギー源などによって大きく変動します。
年間排出量の試算(最適化前)
これらの値を使い、まず、最適化前の二酸化炭素排出量を試算します。
最適化前:1ページあたりの排出量
2.375MB × 0.81g = 約1.924g CO2
最適化前:年間の日本市場全体のPV(ページビュー)ベースでの排出量
1.924g × 1.8兆PV = 約3.46兆g = 約346万トン CO2
年間排出量の試算(最適化後)
続いて、最適化後の二酸化炭素排出量を試算します。
最適化後:1ページあたりの排出量
0.6MB × 0.81g = 約0.486g CO2
最適化後:年間の日本市場全体のPV(ページビュー)ベースでの排出量
0.486g × 1.8兆PV = 約0.875兆g = 約87.5万トン CO2
最適化による削減効果
最適化前・後の年間排出量の試算により、約258.5万トン CO2の削減が見込まれ、これは最適化前の排出量(約346万トン)に対して約74.7%の削減に相当します。
最適化前:約346万トン − 最適化後:約87.5万トン = 約258.5万トン CO2(約74.7%削減)
258.5万トンは何に相当する?インパクト比較
では、約258.5万トン CO2(約74.7%削減)とは、実際どれほどの排出量に相当するのでしょうか? 以下に換算した結果をご紹介します。
杉の木で換算
約1本が年間8.8kgの二酸化炭素を吸収するとすると、約2億9,318万本の吸収量に相当します。
自動車で換算
一般的な自動車1台が年間に排出する二酸化炭素量を約2トンとすると、約129万台分の年間排出量に相当します。
エアコンで換算
家庭用エアコン1台の年間排出量を約320kg(0.32トン)とすると、約807万台分の排出量に相当します。
日本全体との比較
この258.5万トンという削減量は、日本の年間二酸化炭素排出量(約10億トン)全体の約0.26% に相当します。たった1つの取り組みで、全体排出量の0.2%超を削減できる可能性があるという点は、非常に大きな環境インパクトといえるでしょう。
これらの結果は、再生可能エネルギーを使用していないグリーンホスティング未対応の想定に基づいたものです。つまり、ウェブサイトを最適化するだけで、極めて大きな二酸化炭素排出量の削減が可能であることがわかります。
30%削減シナリオ
今回の試算では、ページ容量を70%削減(2.375MB → 0.6MB)した場合を想定しましたが、仮に30%の削減にとどまったとしても、年間で約104万トンのCO2削減が可能であるという結果が得られました。
まとめ:最適化の社会的意義
今回の試算から、ウェブサイトの最適化は、非常に大きな二酸化炭素排出量の削減につながることが明らかになりました。
たとえば、自動車業界では排出ガス削減のために高効率化・電動化が進んでいますが、ウェブサイトも同様に「最適化」という手段でエネルギー消費と排出量を抑えることができます。
行政・自治体においては、公共調達の要件としてウェブサイトの二酸化炭素排出量にも目を向けることが今後ますます重要になるでしょう。また、ウェブ制作者や開発者にとっても、制作物が環境に与える影響を意識した設計・運用が求められます。
当社では、ウェブサイトの最適化をはじめ、人と環境にやさしい低炭素ウェブ構築を推進しています。二酸化炭素排出量の少ないウェブサイトの構築をご検討中のご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
「GreenSyncWeb」の詳細を見る参考文献・出典
- 総務省「令和5年版 情報通信白書(2022年調査)」
- Nielsen「Digital Trends 2019上半期」レポート
- MMD研究所「スマートフォン利用に関する調査(2023年)」
- 林野庁「森林・林業・木材産業をめぐる情勢」(平成26年)
- 国立環境研究所「人口分布と乗用車CO2排出量」
- 環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)」
- 環境省「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」
- HTTP Archive “State of the Web 2024”
- GreenFrame.io(英語)
- Website Carbon Calculator(英語)
- The Green Web Foundation(英語)