第1回「今こそ知りたい、ウェブと二酸化炭素排出量の関係」(連載:脱炭素×サステナブルなウェブ運用のススメ)
1.なぜウェブ運用が環境問題に関係するのか?
ウェブの運用には、データを保管・配信するホスティングサーバーの利用が不可欠です。このサーバーは24時間365日稼働し、多くの電力が必要とされます。一般的なホスティングサービスでは、主に化石燃料によって発電された電力が使われており、その過程で二酸化炭素(CO2)が排出されます。そのため、ウェブ運用も環境負荷の一因となり、環境問題と密接に関わっています。
2.世界的な関心(デジタルカーボンフットプリントとは)
地球温暖化は、いまや世界共通の深刻な課題です。2015年のCOP21で採択された「パリ協定」では、産業革命前と比べて、世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるという目標が掲げられました。
この「1.5℃目標」の達成に向けて、各国が国別削減目標(NDC)を設定し、温室効果ガスの排出削減に取り組んでいます。そのなかで、ウェブやデジタル活動によるカーボンフットプリント(CO2排出量)も注目されるようになってきました。
国別削減目標(NDC)とは、各国が自主的に設定する温室効果ガス排出削減の目標であり、定期的な提出と見直しが義務付けられています。
デジタルカーボンフットプリントとは、ウェブやストリーミング、クラウド利用など、デジタル活動に伴って発生する温室効果ガスの総量を指します。
注記:カーボンフットプリントの定義や、ウェブサイトでの評価対象の違いについては、「環境にやさしいウェブのための脱炭素用語集」もあわせてご覧ください。
3.データ転送と電力消費の仕組み
ウェブサイトのデータはホスティングサーバーに保管され、ユーザーからリクエストがあると、その要求に応じてデータが転送(配信)されます。これにより、ユーザー側でウェブページが表示される仕組みとなっています。
このデータ転送には、サーバーからユーザーのデバイスまでのネットワーク経路全体で電力が消費され、その分だけ発電時に間接的な二酸化炭素排出が発生します。当然ながら、このデータの容量に比例して多くの電力を消費することとなります。
4.一般的なウェブページの二酸化炭素排出量の目安
ウェブページの排出量は、以下の式で概算することができます。
ページ容量(2.375MB) × 単位排出係数(0.81g CO2/MB) = 約1.924g CO2
注記:この計算式の根拠については、「日本市場におけるウェブ最適化の二酸化炭素排出量削減効果とは? 実際に試算してみました」の記事で解説しています。
現在、多くのウェブページ(静的)では0.8g〜1.05g CO2/1PVが一般的とされていますが、画像やスクリプトが多く含まれるページでは1.75g前後に達するケースも増えています。
5.ウェブサイトにおける環境配慮の取り組み例
近年、AWSやGoogleなどの大手クラウドサービス事業者は、再生可能エネルギーの活用を進めることで、サーバー運用による環境負荷の軽減に取り組んでいます。
AWS(Amazon Web Services)は、2025年までにグローバル全体で100%再生可能エネルギーによる運用の達成を目指しており、一部地域ではすでに100%を実現しており、全体としての達成にも近づいています。
Googleは、2021年までに、5年連続で「100%再生可能エネルギーによるカーボンニュートラル運用」を達成。さらに、「24時間365日カーボンフリー」という目標を掲げ、脱炭素に向けた取り組みを加速させています。
このような企業の取り組みは、ウェブ運用全体のカーボンフットプリント削減に寄与するものであり、今後の環境配慮型ウェブ運用の重要な指標となります。
この再生可能エネルギーを使用したホスティングをグリーンホスティングといいます。AWSやGoogle以外にもグリーンホスティングを提供しているサービスが多くあります。
注記:グリーンホスティングについては、「グリーンホスティングとは?環境にやさしいウェブ運用の第一歩」で解説しています。
しかし、これらのグリーンホスティングを利用してウェブサイトを運用している団体や企業は、現時点ではまだ少数であり、国の機関でさえも活用例は限られています。
6.まとめ:見えない排出量への意識改革
このように、ウェブの運用にはホスティングサーバーの稼働が不可欠であり、ページへのアクセスごとに二酸化炭素が排出されていることをご理解いただけたのではないでしょうか。
普段何気なく閲覧しているウェブページの背後には、環境負荷となる要素が存在しています。ウェブと二酸化炭素排出量の関係は、決して無関係ではなく、むしろ密接につながっています。
ウェブサイトを公開するすべての主体(企業・団体・行政機関(自治体含む)・教育機関・個人)にとって、自らが運営するウェブサイトが環境に配慮しているかどうかの責任は、主にホスティング環境の選択と運用方法にあります。なぜなら、ユーザー側ではそれをコントロールすることができないからです。
仮にインフラの都合などでホスティングの変更が難しい場合でも、まずは、画像の軽量化やスクリプトの見直しなど、ウェブ最適化に取り組むことで、排出量を抑える努力が可能です。これはまさに、「供給側の責任」としてのナラティブ・シフト(これまでの価値観や意識の転換)を図る好機といえるでしょう。
今回は主にウェブページやホームページを例に挙げて解説しましたが、SNS・動画・アプリなど、あらゆるインターネットサービスも同様に、環境への影響を持っています。海外では、動画広告が排出する二酸化炭素も課題として認識され、対応が求められつつあります。
7.次回予告:測定方法の具体的な紹介へ
では、自らのウェブサイトの二酸化炭素排出量は、どのように測定できるのでしょうか?
次回(第2回)では、排出量を可視化する具体的な方法をご紹介します。自社が開発・公開するウェブアプリ「GreenSyncWeb®CO2」を使い、測定の手順や結果の見方をわかりやすく解説します。
参考文献・出典
- 環境省「脱炭素化を巡る政策動向」(SHIFT事業関連資料)(PDF:2.5MB)
- 外務省「パリ協定(Paris Agreement)」
- 環境省「パリ協定と我が国のNDC」
- Amazon Web Services「持続可能なクラウドコンピューティング」
- Google Cloud「サステナビリティ」
- IEA (2023) "Data Centres and Data Transmission Networks"
- The Shift Project「The Unsustainable Use of Online Video」
- The Shift Project (2019) "Lean ICT: Towards Digital Sobriety"
- バディワークス「日本市場におけるウェブ最適化の二酸化炭素排出量削減効果とは? 実際に試算してみました」
- バディワークス「グリーンホスティングとは?環境にやさしいウェブ運用の第一歩」