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ウェブ制作はスコープ3? GHG排出とサステナブル運用の視点

の葉に囲まれた白いタブレット端末の画面に「Scope3」と表示されている。サステナビリティとスコープ3排出の関係を象徴するイメージ画像

近年、サプライチェーン全体での温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出を対象とする「スコープ3」が、企業のサステナビリティ経営において強く注目されています。自社が直接排出するスコープ1・2とは異なり、原材料の調達や物流、外注業務、さらには製品の使用や廃棄まで含むスコープ3は、排出量全体の約75%以上を占めるとも言われ、脱炭素の鍵を握る領域です。

ウェブは一見、サーバー上の仮想領域だけのものと思われますが、制作の工程には、撮影や設計、外部委託、インフラ構築、ユーザーの利用など、その裏には多くの物理的な作業やエネルギー消費が存在しています。

本記事では、そうした「見えにくい排出」に注目し、ウェブ制作のライフサイクルにおけるスコープ3排出の構造と、企業・団体が取り組むべきアクションについて解説します。特に、制作会社や企業・団体のウェブ担当者が意識しておくべき実践的なポイントをまとめました。

1.スコープ1・2・3とは?

Scope(以下スコープ)1・2・3とは、企業や組織が排出する温室効果ガス(GHG)を、その排出源の違いによって分類する国際的な枠組みです。これは、温室効果ガス排出量の算定と報告のために策定された「GHGプロトコル(GHG Protocol)」に基づいています(経済産業省, 2023年)。

  • スコープ1:自社施設・車両などからの直接排出
  • スコープ2:購入した電力・熱の使用に伴う間接排出
  • スコープ3:原材料の調達から製品・サービスの使用、廃棄、物流、外注業務など、サプライチェーン全体で発生するその他すべての間接排出

注記:スコープ1・2・3については、「環境にやさしいウェブのための脱炭素用語集」Scope 1・2・3(温室効果ガス排出区分)でも紹介しています。あわせてご覧ください。

企業全体の温室効果ガス排出量の75%以上がスコープ3に該当し、業種によっては90%以上に達するケースもあることが明らかになっています(WRI, 2022年)。このように、スコープ3の可視化と削減は、あらゆる企業・組織にとって、サステナビリティ経営の出発点とも言える重要なテーマです。

2.ウェブサービスとスコープ3の関係

ウェブは一見、クラウド上に存在する仮想的なもののように思われがちですが、制作・運営・利用の各フェーズを通じて、多くのハードウェア・エネルギー消費・人的作業が伴う実体的な活動です。

これらのプロセスは、大きく次のようなフェーズに分類でき、「スコープ3」に該当する場合があります。

フェーズ 内容 スコープ3のカテゴリ
制作フェーズ 撮影、設計、開発、デザインなどの外注業務 カテゴリ1 購入した製品・サービス
運用フェーズ ホスティング、CDN、クラウドインフラの電力消費 カテゴリ2 資本財[1]
利用フェーズ ユーザー端末や通信回線の使用に伴う排出 カテゴリ11 販売製品の使用
  1. 運用フェーズにおける電力消費は、カテゴリ1(購入したサービス)やカテゴリ3(燃料及びエネルギー関連活動)に分類されることが一般的ですが、長期的に利用するインフラそのものを資本財と見なした場合、カテゴリ2に該当することもあります。

注記:これらのカテゴリ分類は国際的なGHGプロトコルに基づく一般的な解釈例です。企業の事業内容や算定範囲の設定によって、実際の分類や計上有無は異なる場合があります。

芝生の上に木製ブロックで『G』『H』『G』と書かれた立方体が並び、それぞれにGreen、House、Gasesの文字が添えられている。温室効果ガス(GHG)を表すイメージ画像
スコープ3には、GHGプロトコルで定められた15のカテゴリがあります。

ウェブサービスとGHGプロトコルカテゴリとの対応

では、なぜ「制作フェーズ」のような外注業務やクラウドサービスの利用が、スコープ3の「カテゴリ1(購入した製品・サービス)」に該当するのでしょうか?
この理由を理解するには、GHGプロトコルで定義されたスコープ3の分類を参照する必要があります。スコープ3には、全部で15のカテゴリが定められており、それぞれに該当する活動例が示されています(経済産業省, 2023年)。

カテゴリ 該当する活動(例)
1 購入した製品・サービス 原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
2 資本財 生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)
3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動 調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)
調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
4 輸送、配送(上流) 調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
5 事業から出る廃棄物 廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送[1]、処理
6 出張 従業員の出張
7 雇用者の通勤 従業員の通勤
8 リース資産(上流) 自社が賃借しているリース資産の稼働(算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半)
9 輸送、配送(下流) 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
10 販売した製品の加工 事業者による中間製品の加工
11 販売した製品の使用 使用者による製品の使用
12 販売した製品の廃棄 使用者による製品の廃棄時の輸送[2]、処理
13 リース資産(下流) 自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
14 フランチャイズ 自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動
15投資 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
その他(任意) 従業員や消費者の日常生活
  1. Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を任意算定対象としています。
  2. Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を算定対象外としていますが、算定頂いても構いません。

この中で、ウェブサービスに関係するものは、以下のカテゴリーが考えられます。 解釈によって当該カテゴリが異なることもありますが以下の表にまとめました。

カテゴリ ウェブとの関係 排出例
1 購入した製品・サービス 外部制作会社への委託、SaaS・クラウドサービス 制作費、クラウド利用料
2 資本財 自社CMSやアプリの開発・導入[1] 長期的なITインフラ構築・運用
3 燃料およびエネルギー関連 サーバー稼働に関わる発電用燃料などの間接排出 クラウド基盤の電力発電由来排出
6 出張 撮影・取材・会議・訪問など 出張による移動(交通機関)
7 雇用者の通勤 制作スタッフの通勤 公共交通や車通勤に伴う排出
11 販売した製品の使用 サイト閲覧時のユーザー端末やネットワーク スマホ・PCの電力消費、通信回線
13フランチャイズ 多拠点CMS運用、テンプレート配信 サービス利用者側の排出
  1. 自社が直接契約し、管理・運用しているサーバーやクラウドインフラにおける電力使用による排出はスコープ2に該当します。一方、そうした機器やシステムを購入・導入した際の製造・調達に伴う排出は、スコープ3のカテゴリ2(資本財)に該当します。

このように、スコープ3の中でも、ウェブ制作・運用に関連する排出は多岐にわたります。そして、可視化や定量的評価が困難な領域も少なくありません。

しかし、だからといって放置したままでは、サステナブルなウェブ運用にはつながりません。ウェブを持つすべての企業・団体にとって、「できるところから取り組む」ことが重要です。

4.企業・団体がとるべき3つのアクション

では、ウェブに関連するスコープ3排出への対応として、どのようなアクションがあるでしょうか?今日から始められる3つのアクションを紹介します。

アクション1:可視化する「知ることからはじまる」(担当者・制作会社・社内情システム)

ウェブに関わる排出量は「見えにくい」ものの代表各とも言えます。まずは、ページ単位のデータ容量(データ転送量)と二酸化炭素排出量の可視化(g/PV)から始めましょう。

当社のGreenSyncWeb®CO2では、データ容量と二酸化炭素排出量を定量的に可視化可能です。また、定量化が難しい領域でも「使用しているインフラがグリーンホスティング(再生可能エネルギー)かどうか」も計測可能です。質的評価も重要な可視化の一歩です。

注記:GreenSyncWeb®CO2の主な機能一覧は、ウェブの二酸化炭素排出量を「見える化」するツール「GreenSyncWeb®CO2」正式リリースでも紹介しています。あわせてご覧ください。

アクション2:選定する「サステナブルな選択を」(ベンダー選定部門、Web担当者、経営層)

制作・運用・クラウドインフラ・CMS・外注パートナーなどを選定する際に、「環境負荷の少ない選択肢」を意識しましょう。

グリーンホスティング未使用の通常環境においても、最適化のみで約74.7%の削減が見込まれます(当社独自試算)。(詳細は「日本市場におけるウェブ最適化の二酸化炭素排出量削減効果とは? 実際に試算してみました」試算に用いた前提条件を参照ください)

制作会社に依頼する場合でも、ウェブサイトが環境問題に直結する意識を持ち、それらに対応可能な外注パートナー選びが今後重要になると考えます。

アクション3:共有・啓発する「組織と顧客の行動を変える」(広報、マーケ、CSRチーム etc.)

ウェブのサステナビリティは、制作部門だけの話ではありません。社内(広報・営業・情シス)や社外(顧客・閲覧者)にも、「ウェブも環境負荷があること」を伝えることが重要です。

社内外の意識が変われば、「もっと軽くて地球にやさしいウェブを作ろう」という文化が育つと考えます。ウェブの排出は、気づかれにくく、測りにくいからこそ、まず「可視化・選定・共有」という3つのアクションが出発点になります。

まとめ:サステナブルなウェブ運用には「ウェブの脱炭素」が欠かせません

ウェブ制作・運用は、見えにくくても確実にスコープ3排出の一部です。その排出量の算出は容易ではありませんが、まずはできるところからアクションを起こすことが肝要です。 サイトの設計、インフラの選定、そして日々の運用、そのすべてが、温室効果ガス排出に影響しているという認識が、次の一歩を生み出します。

「気候変動は、どこか遠くの話ではない」私たちが毎日アクセスし、更新するウェブにも、社会と地球にやさしい選択肢があると、私たちは考えています。

バディワークスでは、こうした視点を「GreenSyncWeb®」という取り組みとして体系化し、ウェブ制作の根幹に据えています。サステナブルなウェブ運用の第一歩は、「ウェブの脱炭素」に目を向けることが重要です。

「GreenSyncWeb®」の詳細を見る

参考文献・出典