ウェブサイトにも環境負荷がある:海外動向から考えるデジタルの脱炭素
「ペーパーレス化で環境配慮」多くの企業が、そう考えてデジタル化を進めてきました。しかし、デジタルそのものにも環境負荷があります。
ウェブサイトの閲覧、クラウドサービス、動画配信、オンライン会議、AIの活用。これらは、データセンターや通信ネットワーク、利用端末を通じて電力を消費しています。
海外では、ウェブサイトやデジタルサービスを、環境負荷を管理すべきデジタル資産として捉える動きが進んでいます。
これからの脱炭素経営では、「紙を減らす」だけでなく、「デジタルをどのように設計し、利用するか」も重要になります。
デジタルは、目に見えないだけで環境負荷がないわけではない
ウェブページを表示するたびに、サーバーからデータが送信され、通信ネットワークを経由して利用者の端末で処理されます。
ページ容量が大きいほど、データ転送量や処理負荷も増えます。画像や動画、外部スクリプト、不要なコードの増加は、通信量とエネルギー消費を押し上げる要因になります。
近年は、クラウドサービスや動画配信、生成AIの利用拡大を背景に、データセンターの電力需要が注目されています。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のデータセンターの電力需要は2025年に前年比17%増加し、2030年には2024年の約2倍となる約945TWhに達すると予測されています。
一方、2030年時点でも世界全体の電力需要に占める割合は3%弱とされており、デジタルの環境負荷は対象範囲によって試算が大きく異なります。データセンターや通信ネットワークだけでなく、端末の製造・使用・廃棄まで含めるかによっても数値は変わります。
欧州では、企業活動全体の環境負荷を捉える動きが進んでいる
欧州では、企業活動やバリューチェーンに関する環境・社会への影響を把握し、開示する制度の整備が進んでいます。
EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)では、対象企業に欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づく情報開示が求められますが、対象は原則として従業員数1,000人超かつ年間純売上高4億5,000万ユーロ超の企業に絞り込まれました。
2026年7月には、開示項目を簡素化した改定ESRSと、小規模企業向けの任意報告基準も採択されています。
CSRDがウェブサイトの環境負荷を個別に開示対象としているわけではありませんが、クラウド、データ通信、外部のデジタルサービスなども、企業活動を支える事業基盤の一部です。ウェブサイトの環境負荷をそのままScope 3の削減量として計上できるとは限らないものの、デジタルサービスの利用状況を把握し、改善することは、バリューチェーン排出量を管理する具体的な取り組みのひとつになります。
フランスのREEN法に見る、デジタル環境負荷への制度的な対応
デジタル環境負荷への対応を考えるうえで、参考になる海外事例が、フランスで2021年に制定されたREEN法です。正式には「デジタルの環境フットプリント削減に関する法律」といい、端末の長寿命化、環境負荷の少ないデジタル利用、データセンターや通信ネットワークの効率化など、デジタルのライフサイクルを幅広く対象としています。
具体的な取り組みのひとつが、2024年版の「デジタルサービス・エコデザイン一般基準(RGESN)」です。ウェブサイトを含むデジタルサービスについて、企画、設計、コンテンツ、開発、ホスティングなどの観点から、機器やエネルギーの使用を抑え、利用端末の陳腐化を早めないための考え方が整理されています。
この法律や基準が日本企業に直接適用されるわけではありませんが、ウェブサイトやアプリを企画・設計・開発・運用の各段階で見直す考え方は、今後のデジタル活用に重要な示唆を与えています。
日本企業にとっても無関係ではない
日本の中小企業が、直ちに欧州の制度へ対応する必要があるとは限りません。また、欧州の開示制度によって、すべての中小企業に詳細な情報開示が義務付けられるわけではありません。
一方で、取引先調査、サステナブル調達、脱炭素目標、CSRアンケートなどを通じて、環境情報の提供を求められる可能性はあります。
その際、自社のデジタル環境負荷を把握し、改善方針を説明できることは、企業姿勢を示す材料になります。たとえば、次のような観点です。
- 自社サイトのページ容量は適切か
- 画像、動画、不要なコードが過剰になっていないか
- 外部スクリプトやウェブフォントを必要以上に読み込んでいないか
- ホスティング環境の電力や再生可能エネルギー利用状況を確認しているか
- 環境負荷を継続的に測定し、改善しているか
これらは直ちに法的義務となるものではありませんが、脱炭素経営やScope 3、サステナブル調達への関心が高まる中で、自社の取り組みを具体的に説明するうえで役立ちます。
ウェブサイトから始められるデジタルの脱炭素
デジタル領域の脱炭素は、大規模なシステム刷新や設備投資だけではありません。企業が取り組みやすい領域のひとつが、自社のウェブサイトです。ウェブサイトの環境負荷は、特別な設備がなくても、次のような方法で改善できます。
- 排出量の測定:ページ容量や二酸化炭素排出量の推計値を測定する
- 要素の見直し:画像、動画、不要なコード、外部スクリプトを見直す
- 転送量の削減:データ転送量を減らし、キャッシュや配信方法を最適化する
- 環境の確認:ホスティング環境の電力効率や再生可能エネルギー利用状況を確認する
- 情報の発信:改善内容をサステナビリティ情報として発信する
ウェブサイトの軽量化は、環境負荷の低減だけでなく、表示速度やユーザー体験の改善にもつながります。通信環境が不安定な利用者や処理性能の低い端末でも情報を得やすくなるため、アクセシビリティの観点でも意義があります。
ウェブサイトの脱炭素は、環境配慮、ユーザー体験、アクセシビリティ、運用品質を同時に見直せる取り組みです。
まとめ:まずは、自社サイトの可視化から
海外では、企業活動全体の環境負荷を開示する制度に加え、ウェブサイトやデジタルサービスを環境負荷の視点から設計・評価する基準も整い始めています。日本企業にとっても、これは遠い話ではありません。
まずは、自社サイトのデータ量や環境負荷を大きくしている要素を把握することが、デジタル領域の脱炭素に向けた第一歩になります。
BuddyWorksでは、ウェブページ単位の二酸化炭素排出量の推計値やページ容量、画像、外部スクリプト、ホスティング環境などを確認する「ウェブ環境負荷簡易診断」を行っています。
ウェブサイトからはじめる脱炭素に取り組みたい企業・団体の方は、まずは自社サイトの現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。
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