環境情報発信にも「根拠」が必要な時代へ―2026年改定「環境表示ガイドライン」と企業ウェブサイトの役割
企業のウェブサイトでは、「環境に配慮しています」「脱炭素に取り組んでいます」といった環境情報を目にする機会が増えました。
一方で、こうした環境主張には、何を根拠としているのか、その内容を確認できるのかという視点が、これまで以上に求められています。
環境省は2026年3月、「環境表示ガイドライン」を13年ぶりに改定しました。今回の改定は、商品パッケージや環境ラベルだけでなく、事業活動やイメージ広告、企業姿勢なども対象に含まれ、企業ウェブサイトでの情報発信にも関係します。
改定されたガイドラインと、博報堂DYホールディングスの「環境表示ガイドライン実践ガイドブック」から、環境への取り組みをどう伝え、その根拠をどこで示すのか、これからの企業ウェブサイトの役割を考えます。
1. 2026年、環境表示ガイドラインが13年ぶりに改定
「環境表示ガイドライン」は、事業者が行う環境表示について、望ましい環境情報提供のあり方を示したものです。
今回の改定では、グリーンウォッシュへの国際的な関心の高まりなどを背景に、自己宣言による環境主張についての基本的な考え方が整理されています。
重要なのは、その対象が商品・サービスだけではないことです。
製品やサービスの取引と直接関係しない事業活動、イメージ広告、企業姿勢などの環境表示も適用範囲に含まれます。
博報堂DYホールディングスの実践ガイドブックでも、今回の改定について、商品パッケージや商品広告だけでなく、企業広告、IR資料、ウェブサイト、SNSなども対象になると整理しています。
つまり、企業サイトで環境方針や脱炭素への取り組みを発信する場合も、「環境表示」という観点と無関係ではありません。
2. 「環境にやさしい」だけでは伝わらない
改定された環境表示ガイドラインでは、自己宣言による環境主張について、5つの基本項目を示しています。
- あいまいな環境主張を行わない
- 環境主張の内容に説明文を付ける
- 製品のライフサイクル全体を考慮する
- 検証に必要なデータや評価方法を提供でき、情報にアクセスできるようにする
- 比較主張はLCA評価や数値などにより適切に行う
例えば、「環境にやさしい」「地球にやさしい」「グリーン」といった表現を単独で使用するのではなく、何がどのように環境へ配慮しているのか、合理的な説明を伴わせることが重要です。
環境情報は、イメージだけではなく、「何を、どの範囲で、どの程度行ったのか」まで説明することが求められています。
こうした考え方は、環境に関する認定等を表示する際にも通じます。例えばSBTiの現行コミュニケーションガイダンスでは、認定済み企業であっても、SBTiロゴを使用する際には、認定された削減目標についての説明と切り離して単独で使用することは認められていません。
3. ウェブサイトは環境への取り組みを「証明する場所」へ
企業ウェブサイトの役割という観点から、ここでフォーカスしたいのが4番目の項目です。
環境主張を裏付けるデータや評価方法に、容易にアクセスできること。
例えば、「CO2排出量を削減しました」と発信するのであれば、対象範囲、基準年、算定方法、削減量など、その根拠を確認できる情報へつなげることが重要です。
広告やSNS、製品パッケージなどでは、掲載できる情報量に限界があります。一方、ウェブサイトなら概要から詳細な根拠まで、情報を階層的に整理できます。
これからの企業ウェブサイトは、環境への姿勢を「宣言する場所」だけではなく、その主張を「証明する場所」としての役割が重要になっていくと考えられます。
4. オウンドメディアを「環境主張の根拠基盤」にする
博報堂DYホールディングスの実践ガイドブックでは、動画・CM、SNS、製品パッケージ、店頭POP・イベント、オウンドメディア・サステナビリティレポートという5つのタッチポイントの役割を整理しています。
その中で、オウンドメディア・サステナビリティレポートは、広告表現を裏付ける科学的根拠(エビデンス)を網羅的に開示し、信頼を担保する媒体と位置づけられています。 つまり、SNSや広告などで環境への取り組みを発信し、その詳しい根拠を企業ウェブサイトで確認できるようにするという考え方です。
なお、環境省のガイドラインが「オウンドメディアをエビデンス基盤にする」と直接規定しているわけではありません。根拠情報へのアクセス可能性を、広告・コミュニケーションの実務へ展開した考え方と捉えるのが適切です。
5. GHG算定やSBTiなどによる目標認定も「発信して終わり」ではない
企業の脱炭素への取り組みには、GHG(温室効果ガス)排出量の算定や削減目標の設定、SBTiなどによる目標認定があります。
重要なのは、それらを発信して終わりにせず、算定、目標設定、削減、進捗管理、根拠を伴う情報開示までを一連の取り組みとして考えることです。
例えばGHG排出量を公開する場合も、数値だけでなく、対象年度や算定対象、基準年との比較など、数値の前提となる情報を併せて示すことで、その意味をより正確に伝えることができます。
6. 環境への取り組みは「現状」を正確に伝える
環境情報を発信するために、完璧な状態になる必要はありません。博報堂DYの実践ガイドブックでは、成果だけでなく、残っている課題や目標を達成できなかった理由なども開示することが、信頼につながるとしています。
また、グリーンウォッシュを恐れて情報発信を控える「グリーンハッシング」に陥るのではなく、現在の取り組みを正確に伝えることの重要性も示されています。
大切なのは、環境に良い会社に見せることではなく、何を行い、どこまで進み、何がまだ課題なのかを、根拠とともに示すことです。
7. まとめ:環境情報を「測る」ことと「正しく伝える」ことをつなぐ
2026年改定の「環境表示ガイドライン」から見えてくるのは、環境情報発信において、イメージだけではなく、根拠や透明性が一層重要になっているということです。
GHG排出量の算定、目標設定、削減、進捗管理、そして情報開示を分断せず、一連の環境対応として考える。その根拠を継続的に蓄積・公開する情報基盤として、企業ウェブサイトは重要な役割を担います。
環境への取り組みを「測る」ことと「正しく伝える」ことをつなぐ。それが、これからの企業ウェブサイトに求められる役割の一つではないでしょうか。